エルドラージ覚醒・ドラフト環境の解説



エルドラージ覚醒 x3 のドラフト環境について、気づいたことを少しずつ書き加えていきます。

エルドラージ覚醒 のシステム


 主なデッキ構成

・エルドラージ覚醒は、ゼンディカー環境に比べ格段に遅くなった。マナ・コストが大きなクリーチャーも戦場に出るため、カードパワーがものを言う一方的な試合になることも多い。
・Lv系クリーチャーのおかげで、自分のメインフェイズに動いてマナを使うことも多い。そのため、自ずと仕掛けられるコンバット・トリックの種類が制限される。
・マナを食うクリーチャーが多いので、マナ基盤を充実させるカードや、落とし子を生み出すカードの重要度が高い。
・防衛持ちや防御に優れるカードがきわめて多く、クリーチャーが並ぶ硬直状態に陥りやすい。そのため、この環境では「負けにくいが、勝てない」デッキができやすい。いずれにせよ、明確な勝ち手段を踏まえたピックが重要であり、主な勝ち手段を意識しておきたい。
※ 主要なアーキタイプについては、ドラフトの戦略「第6回 〜ROEドラフト・アーキタイプ再び〜」をご覧ください。
主な勝ち手段
  (1) エルドラージを早く出す ← こちらが有利な状態で、硬直状態を壊す。赤や緑が得意。
  (2) 回避能力持ち(飛行など)で攻める ← 硬直状態の隙を狙う。白や青が得意。
  (3) クリーチャーを無視できる勝ち手段(《号泣の石》《孔の歩哨》など)を用意する
  (4) 強力なレア、もしくは神話レアの、カードパワーで押し勝つ

 エルドラージ

・高マナコストのファッティ・クリーチャー。無色で出せる。デッキに入るかどうかは、マナコスト次第。
・「滅殺」能力は、相手に、パーマネントを生け贄に捧げることを要求するが、「土地」や「エルドラージ・落とし子・トークン」を生け贄にするケースが多い。すなわち相手のマナ源を縛れるため、早く出した方が圧倒的に優位となる。そのため、エルドラージを使う場合は、マナが揃ったら即出すべき。
・(8)、(9)マナ域
防御を考慮して、序盤に押し切られないようなデッキ構成にすれば、色に依らずデッキに入れられる。《ウラモグの破壊者》あたりは、見たら取っても構わない。
・(10)〜(11)マナ
(1)マナに変えられる0/1トークン、「エルドラージ・落とし子」を生み出すカードが、赤や緑にある。このマナ域のエルドラージを使う場合には、どちらかの色を使い、デッキに「落とし子」を使う仕掛けを入れておけば、何とか出せる。それ以外のデッキでは、出せずに手札に腐ってしまう可能性が高い。
・(12)マナ以上
《目覚めの領域》などの、きわめて優秀なサポートがないかぎり、唱えるのは難しくなる。
対策 (カード例は、コモン・アンコモンより)
◎ 無効化 :攻撃を阻止するので、滅殺が誘発しない。《護衛の義務》《睡眠発作》
○ バウンス :トークン経由で出された場合、かなり猶予が得られる。《失脚》《逆行》
○ 接死 :わりと現実的。《短刀背のバジリスク》《悪性の強打》など。
△ 破壊 :ただし痛みを伴う。《強打》《血の復讐》
△ 打ち消し :タイミングを逃すとダメ。《剥奪》《解明》
△ パワーを上げて討ち取る :強化オーラや、《オーガの列断剣》を付ける。(10-05-18追記)

 飛行・その他 回避能力

・回避能力はこの環境ではきわめて重要。除去が少ない環境なので、これらのクリーチャーをいくつか戦場に出せたなら、他を防御で固めてしまっても勝ててしまう。
・白と青に多い飛行クリーチャーの攻撃が通りやすい。地上が壁クリーチャーで止まっても、空は隙ができやすい。対策としては、白の《魂縛りの守護者》や、緑の到達持ちの蜘蛛、《胞子頭の蜘蛛》を取っておくと安心(パワー5以上の飛行クリーチャーは数が限られるため)。他にも《葉の矢》など。ただし複数必要になることが多く、完全に封じるのは困難。(10-05-18追記)
・青に、ブロックされない《ハーダの巡回スパイ》がおり、2ターンにわたり、ブロックされないクリーチャーを作る呪文《ひずみの一撃》もある。また、《ハリマーの波見張り》は、成長すると島渡りを持つ。(10-05-18追記)
・緑に、自身のパワーが上がるとブロックされにくくなる《オーラのナーリッド》がいる。強化オーラと組み合わせた戦術は強力。

 除去・除去耐性

・もちろん除去は必要ではあるが、万能な除去カードは環境にきわめて少ない。基本、クリーチャーの殴り合いになることを覚悟したい。
・1〜2点のダメージ除去は豊富にある。なるべく早くタフネス3にしたいところ。タフネス5あれば、ひとまず安堵。
・1点除去 : 《産卵の息》《炎の覆い》。全体に影響する《減縮》。クリーチャー関連では、《アクームの岩足》《ゴブリンの付け火屋》。ティムに、《硫黄石の魔道士》(Lv1-2)がいる。
・2点除去 : 《最後の口づけ》《二股の稲妻》《よろめきショック》
・3点除去 : ティムとして 《硫黄石の魔道士》(Lv3+)。また、飛行持ち限定の《葉の矢》
・4点除去 : 《炎の斬りつけ》
・X点除去 : 《熱光線》《絶望の誘導》
・除去オーラ : 万能な《睡眠発作》と、防衛付与の《護衛の義務》(10-05-18追記)
・他にも、「黒でない」クリーチャー除去の《血の復讐》《死骸孵化》、ブロックされたクリーチャーを対象とする《強打》。パワー1以下を破壊する《バーラ・ゲドの蠍》、パワー3以下に有効な《コーの綱投げ》《刺し込む光》などもある。

 Lv系クリーチャー

・戦場に出た後、Lvアップ・コストを払い強化できるクリーチャー群。序盤に出しても、戦場で強化できるので、ゲーム後半になっても活躍できる利点がある。ただし、マナを食う。また、自分のメインフェイズでしかLvアップできないため、どのタイミングで成長させるかが悩みの種となることも。
・Lvアップによる成長の機会は2回。Lvアップによりタフネスが上がるものは、なるべく早く1段階目の成長を済ませて除去に備えたい。また、2段階目の成長を終えると、手がつけられなくなるクリーチャーも多い。出された場合は、なるべく成長前に対処を。
・全色に存在するが、白・青にサポートするカードが多い。2レベル分、Lvアップ・コストを踏み倒して成長させられる《敬慕される教師》や、Lvアップ・コストを抑えられる《訓練場》、+2/+2修整を与える《英雄の時》など。
・Lvアップ・コストが(1)〜(2)マナと軽いものは、マナの余りを効率よくLvアップに使え、確実に強くなれるものが多い。コストの色拘束には注意。一方、Lvアップ・コストが(3)マナ以上のものは、まとまったマナがないとLvアップができないので注意。ひとたびLvアップすれば強力になるが、序盤にはほとんどその機会が得られない。戦場が整うまで手札に温存しておくのも手。
※ これらLv系クリーチャーの戦略については、日本語公式ウェブサイトの、「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術 第16回 レベルのアップをじじいで成したら、殴り値ビッグでノックダウン の記事に詳しいので参照されたい。

 族霊鎧オーラ

・「〜の陰影」という名前のオーラ。これらは「族霊鎧」の能力により、オーラがクリーチャーの破壊を肩代わりしてくれるため、通常のオーラに比べアドバンテージを失いにくい。(能力が適用されても、クリーチャーがタップしたり、戦闘から取り除かれたりはしないので注意)
・このリミテッド環境は除去が少ないため、特にP/Tを強化する族霊鎧オーラは、他のエキスパンションのオーラに比べ強力。使用頻度も高い。
・族霊鎧オーラは、白/青/緑の3色のみに分布している。
・白に、オーラをサーチする《族霊導きの鹿羚羊》 が居る。
《コーの精霊の踊り手》《オーラのナーリッド》 は、オーラの使用により強くなる。強力になったとはいえ、オーラは、クリーチャーが居なければ唱えられない。《オーラのナーリッド》の回避能力を軸にデッキを組む場合も、クリーチャーの枚数が十分確保できるよう気を配ってピックすること。
対策
・族霊鎧オーラの能力は、タフネスのマイナス修正による除去や、生け贄に捧げる効果(エルドラージの滅殺など)に対しては意味を成さないので、これらを用いるのが一応の対策となる。
・また、クリーチャーをバウンスしたり、《睡眠発作》のようなオーラで無効化してしまうことも可能。
・直接のエンチャント破壊呪文として、《啓蒙》《帰化》もある。相手が赤黒でない限り、デッキにエンチャントが入っている可能性は高いが、特別に対策が必要な族霊鎧オーラは少ない。

 アーティファクト

・装備品は、ほとんどが強化用。だが、重いため採用されにくい。 壁クリーチャーの突破や、回避能力持ちにつけての速やかなゲーム終了を狙い、パワーに修整をかけられる 《戦争売りの戦車》 や、《オーガの列断剣》 が使われる。(10-05-11 追記)
・この環境はアーティファクト破壊ができるカードが限られている(《帰化》《地割れの孔》のみ)。《号泣の石》は要注意アーティファクト。

 防衛

・リミテッドでは攻撃に行けないため敬遠されがちだが、《孔の歩哨》の能力をあてにして、他を防衛持ちで固めるという戦略がある。タフネス4と除去が難しく、コモンであるため、固め取りできると強力。
《戦争売りの戦車》は、防衛持ちを攻撃可能にしてくれる装備品。


デッキ色の選択

単色指向のカードもいくつかあるが、土地がかなり伸びる環境なので2色デッキが中心となる。
《予言のプリズム》や、《進化する荒野》のおかげで、3色以上も組みやすい。特に緑には、基本土地のサーチも充実している。(10-05-18追記)
エルドラージ覚醒の各色の強弱は、
 緑が強い、赤・白・青はまずまず、黒はやや魅力に欠ける
 緑が強く、次いで青。赤・白はまずまず、黒はやや魅力に欠ける
という印象。(10-05-05修正)

 白

除去は種類こそ豊富にあるものの、万能なものはない。
飛行を持つものが多いので、相手のクリーチャー群を乗り越えて序盤からダメージを与えてゆける。
デッキスタイルとしては、序盤から出せるLv系クリーチャーを活かせる青と組むか、族霊鎧オーラのシナジーを有する緑と組むのが無難。

 青

白同様、Lvアップクリーチャーと飛行持ちが多い。
また、《睡眠発作》のおかげで除去も強力である。
レアを除けばクリーチャーの質は高くないが、コモンだけでも、ドロー・カウンター・コンバットトリック・エンドカードを有し、融通が利きやすい。どの色と組んでも、そこそこの活躍ができる。

 黒

除去はあるが、いまひとつ使い勝手が良くない。
クリーチャーも、回避能力・サイズ・マナサポート、どれをとっても中途半端なので、他の色の戦力に依存しなければならない不遇の色。
良質のレアやアンコモンが複数取れない限りは、メインで使うのは避けた方がよい。

 赤

様々な火力を擁するので、この環境では除去に最も優れる色。ただし大物は焼きにくい。
クリーチャーは、やや防御よりに構成されていて、防衛持ちも多い。
落とし子を使ったマナ・サポートを生かしエルドラージを出せる点では緑と相性が良く、防御を固めて一撃必殺を狙うなら、青とも相性が良い。
ちなみに、レアや神話レアにハズレがないのも今環境の特徴。

 緑

トップコモン:《コジレックの捕食者》《成長の発作》 ほか、色々ある
使えるコモン・クリーチャーが多いので、除去が少ない環境も後押しして緑は安定する。
マナサポートと合わせて、重いカードを早く出すのに特化させるも良し、クリーチャーを数出して強化して押し切るも良し。
基本、緑だけでも強いので、どの色と組み合わせても良い。卓内で被りやすいのが難点。


警戒すべきカード

(良く見かけるアンコモン・コモンのうち、アドバンテージを取られやすいもの)

 白

《強打》 (W)
 攻撃クリーチャーを葬る1マナ。
《刺し込む光》 (1W)
 何気なく攻撃してきたパワー3以下を葬る。Lv系クリーチャーで攻撃する際には要注意。
《アーファの番犬》 瞬速・クリーチャー(2W)
 突然出てくる2/5。序盤、無警戒に攻撃すると、たまに痛い目を見る。
《無傷の発現》 (W)
 プロテクションを得ると、一方的になりやすい。

 青

《長魚の陰影》 瞬速・オーラ(1U)
 +1/+1付与されて1回破壊されなくなる。
《ひずみの一撃》 ソーサリー(U)
 巨大クリーチャーの攻撃が確実に通ってしまう。2回も。
《現実のひきつけ》 (XUU)
 複数クリーチャーをタップされ、攻撃の道をこじ開けられてしまう。(10-05-18追記)

 黒

《バーラ・ゲドの蠍》 クリーチャー(3B)
 タフネス1以下パワー1以下は要注意。(10-05-09訂正)
《悪性の強打》 (B)
 相手がたとえ落とし子だろうと相打ちを取られてしまう。反復持ち。

 赤

《炎の覆い》 ソーサリー(3R)
 タフネス1を3体墓地へ。そうでなくとも、使われたターンは攻撃されること必至。
《裏切りの本能》 ソーサリー(3R)
 一時的なコントロール奪取。フィニッシャーを奪われるとタダでは済まない。(10-05-18追記)

 緑

《大群の力》 (G)
 攻撃をうっかりスルーしようものなら、状況次第で一撃必殺。


エルドラージ覚醒x3 ドラフト



各種シナジー

 参考リンク:
《欠片の双子》 と CIP持ち・落とし子生成クリーチャー
「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術 第14回 かくせい!!(日本語公式ウェブサイト)
・エルドラージ と エルドラージ・落とし子・トークン
「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術 第15回 Spawn Beats(日本語公式ウェブサイト)



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