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ドラフトの戦略3
点数表の限界

前回の ドラフトの戦略2 〜2手目・上の色を読み解け!〜 で、「ドラフト点数表・万歳!」みたいな書き方をしていますが、もちろん使い方しだいです。戦略について書くなら、ドラフト点数表がいかにアテにできないか、という話もしないと片手落ちですね。
ドラフト点数表が万能ではないことは経験を積むとおのずと知らされますが、「ではどういう場合に使えないのか?」を理解するのは大切なことなので、今回はそれについて少し書きたいと思います。

ドラフト点数表の欠点
カードの評価は、自分が既にピックしたカードに応じて変わっていきます。
例を挙げれば、たとえば自分が「赤緑のデッキを作ろう」と決めた時点で、自分にとっては、青のカードの点数はほぼ最低ランクまで落ち込む、ということです。…まあ、当たり前ですね。
これだけではありません。仮に「自分にとって」という条件 抜きに考えたとしても、カードの評価は、やはりドラフトが進むだけで変わっていきます。
それをドラフト点数表では、強引に「いつでもカードの価値は変わらない」とみなして点数付けをしますので、どうしても、ドラフト点数表のみに頼るピックには限界があります。
「ピックが進むごとに移り変わっていく評価を追えない」
これが、既存のドラフト点数表の最大の欠点だと、私GRは思っています。
ドラフト点数表の方を改良して、この欠点の克服をめざすのは無謀なので、
カードの価値は、ピックが進むとともに変化する
ことをまず念頭においてください。未来のピックをアテにする
さて、ドラフトが進むだけで評価が変わってしまうカードの際たるものは、「未来のピック」をあてにするカードです。一般的な表現で言えば「環境内の多くのカードとシナジーを持つカード」になります。(※ 長いので「環境とシナジーするカード」と書くことにします)
環境とシナジーするカードは、単なるカードパワーによる評価に比べると、リミテッド戦・特にドラフト点数表による評価が大幅に高くなるのが普通です。
ゼンディカー環境で言うなら、
(1) 「同盟者」のカード。
(2) 「上陸」システムを手助けするカード。
に当たります。
(1) 「同盟者」のカード。
(2) 「上陸」システムを手助けするカード。
に当たります。
※ (1)の「同盟者」は、同タイプを持つクリーチャーの数に応じて、強くなります。ゼンディカー環境には多くの同盟者があるので、いわゆる「固め取り」ができれば強くなります。
(2)の「上陸」は「土地が出れば強力になる」一連のカード群で、ゼンディカーのいわば花形のシステム。ゼンディカーには、多くの「上陸」能力を持つカードが含まれています。今ここで取り扱いたいのは、「上陸」を持つカードそのものではなく、《砕土》 のような、「上陸」をサポートするカード。こういったカードは、ただのスタンダード・デッキで使うよりも、「上陸」のシステムを存分に詰め込んだデッキで使うほうが、強力な働きを持ちます。
「早ければ早いほど評価が上がり、遅くなるほど下がる」
ドラフトで、これらのカードに共通するのは、「早ければ早いほど評価が上がり、遅くなるほど下がる」という特徴です。
たとえば、ZEN-ZEN-ZENドラフトにおける 《カズールの大将軍》を例に考えてみます。これは単体では5マナ4/4ですが、他に同盟者が場に出るたび、戦場に出ているすべての同盟者の上に+1/+1カウンターを置いて強化できる能力を持っています。
このカードを1パックめの初手で見かけたならば、……
「今後、同盟者を取っていけば、存分に能力を生かした強いデッキを作れそうだな」
こう期待できるので、デッキのキー・カードになる可能性を大いに秘めています。さて、同じカードを3パックめの初手に見たなら…どうでしょうか。
もし、既に同盟者を大量にピックしていた人の目には、上と同じように強いカードとして映るでしょう。
しかし、ほとんど同盟者を取らずにここまでピックをしてきた場合は、状況が全く異なります。
もし、既に同盟者を大量にピックしていた人の目には、上と同じように強いカードとして映るでしょう。
しかし、ほとんど同盟者を取らずにここまでピックをしてきた場合は、状況が全く異なります。
「これからの3パックめで同盟者を集められるかもしれないけれど、難しそうだな」
こういう見方をされ、このカードを「ピックしたい」とは思えなくなっているのです。ピックが進めば進むほど、「このカードが活かせるような」他のカードをピックする機会が減っていきます。結果、平均的なプレイヤーの目からは、評価は時間と共に下がっていきます。最終的には「ただの5マナ4/4」に近いところまで評価が下がります。
これが評価が時間とともに大きく下がるカラクリです。実際のドラフトにおいても、《カズールの大将軍》は1パックめよりは3パックめの方が流れやすくなる印象があります。
シナジー重視のピック
つまるところ、《カズールの大将軍》のような、環境とシナジーするカードは、早い段階に取った方が有利にドラフトを進められる訳です。実際に1パック目の初手ならば申し分ない選択といえます。
何故でしょう?
もちろん、環境とシナジーするカードを初期にピックしたからと言って、それを有効に使ったデッキになるとは必ずしも言えません。重要なのは、その後のピックの選択肢の幅が広がるからです。デッキに入りうるカードの候補が多いほど強いカードを集めるチャンスが増えますから、デッキの総合力が上がりやすいわけです。
たとえば、同盟者シナジーを意識してピックをしてきたならば、魅力的なピックの選択肢の1つとして、同盟者がある程度取れていないと微妙なカード群(《オンドゥの僧侶》、《ハグラの悪魔信者》、《ムラーサの紅蓮術士》 など)を「取る」という選択肢が入ってきます。もちろん「これらを取らず、別のカードを選ぶ」という選択もできます。しかし、シナジーのないカードばかりピックしてきた場合、「これらを取る」という選択肢自体、出ようがありません。その分、選べる幅が狭くなってしまうのです。
ここまでをまとめると、
ピックし得るカードの選択肢が広がるので、環境とシナジーするカードは強い。
ってことです。繰り返しになりますが、これらのカードはデッキの状況やピックの順目によって大きく評価が変わるので、ドラフト点数表を使う際には気をつけましょう!
補足:シナジー相手の「レアリティ」
「環境内の多くのカードとのシナジー」について考えてきましたが、ここでいう「多くの」とは、種類の多さではなく、流れるカードの絶対数の多さのことを言っています。
リミテッドでは、流通量の多い「コモン」のカードが数の上で支配的なので、実質的に、「環境とシナジーする」イコール「環境内の多くのコモン・カードとシナジーを持つ」と考えて問題ありません。しかもシナジー相手となるコモンが、そこそこ程度の強さで流れやすいカードなら、なお理想的というわけです。
最後に
環境とシナジーするカードのピックは、いわば「未来のピックへの投資」。
管理人のGRは、ゼンディカーの同盟者など大好きなので、つい「投資」に熱を入れたドラフトをやりがちなのですが、皆さんはどうでしょうか。
参考にするも良し、しないも良し。それでは楽しいドラフトを!
管理人のGRは、ゼンディカーの同盟者など大好きなので、つい「投資」に熱を入れたドラフトをやりがちなのですが、皆さんはどうでしょうか。
参考にするも良し、しないも良し。それでは楽しいドラフトを!

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