ドラフトの戦略6

ROEドラフト・アーキタイプ再び


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エルドラージ覚醒(ROE)が発売されて約2週間、この環境にも慣れて来た頃でしょうか?
個人的には、派手にエルドラージが出せる赤緑を狙っているのですが、たいてい赤をやらせてもらえず悶々と緑白に落ち着くことが多いGRです。
今回も、第4回に引き続き、アーキタイプのメモです。


アーキタイプ再び

エルドラージ覚醒の環境は遅く、防御的なクリーチャーが並び、膠着状態に陥りやすいです。そのため、勝ち手段(目的)をはっきりさせないと、中途半端な使えないカードだらけのデッキになってしまいます。
このセットには、特定の目的に沿うようにデザインされたクリーチャーが多く入っているので、それを上手く活用しましょう。目的に則ったピックをすることで、軸が定まった強いデッキになります。すなわち、個々のカードパワーよりデッキの構成(アーキタイプ)を意識したピックです。
また、この環境、何かに対応して使えるインスタント除去の少なさも特筆すべき点の1つです。特定の勝ちパターンに対処する手段が「ほぼ無い」という状況は、アーキタイプ・ドラフトを後押しします。
※「アーキタイプ・ドラフト」の概要については、ドラフトの戦略4 〜WWKx3ドラフト・アーキタイプ〜を、また、「エルドラージ覚醒」セットのシステム等については、エルドラージ覚醒・ドラフト環境の解説も合わせてご覧ください。

色ごとの役割

エルドラージ覚醒では、色ごとの特徴がはっきりしています。選択した色の組み合わせによって、有効な戦略がほぼ決まってしまう、ある意味シンプルな環境です。
この環境に特有の、色ごとの特徴をまとめておきましょう。
族霊鎧××
Lv系
除去×
×
落とし子××
特筆事項飛行
先制攻撃
カウンター
飛行
ブロックされない
再生
接死
パワー強化P/T強化
クリーチャー◎
この環境の黒はすべてにおいて中途半端です。黒は本来、除去を担う色ですが、この環境のコモン除去は、使いにくいものばかりが揃っており、黒をメインにして除去を満載にする戦略が使えません。
強力なレアが確保できれば、黒緑や赤黒でもデッキの形にはなりますが……今ひとつ魅力に欠けます。
残りの4色を見ると……「除去」以外のシステムには、おおむね2色が割り振られていることから、それを元に4つのアーキタイプが作れます。アーキタイプによって必要なカードの種類も違うので、除去など一部の汎用カードを除いて、容易に棲み分けられるようになっています。
以下、デッキの構成例を紹介します。

(1) 緑白オーラ

 主なデッキ構成

・オーラを存分に活かす構成です。有効な勝ち手段の1つは、《オーラのナーリッド》にオーラを付けて強化し、相手のブロッカーをかいくぐります。族霊鎧オーラにより、《オーラのナーリッド》に破壊耐性がつくとともに、パワーが上がりブロックされにくくなります。
《族霊導きの鹿羚羊》からオーラをサーチできます。
・白は、クリーチャーを序盤から展開でき、飛行持ちも多いので、攻め手に困りません。また、緑にはトランプル持ちや接死持ちなど、族霊鎧オーラと相性の良いクリーチャーが多いので、攻撃の軸が幅広く取れます。(8)〜(9)マナのエルドラージも、難なく入れられます。
・バウンスが弱点。1体にオーラを固めて付けるのではなく、分散させてリスクを減らしましょう。
・序盤からクリーチャーで攻めるデッキです。クリーチャーとオーラを優先し、他の呪文は取らなくとも構いません。
・直接除去の手段は無いので、相手側に厄介なシステムクリーチャーが出現しても止める手立てを持ちません。速やかに相手ライフを削りきりましょう。

 デッキ例

ROEx3・ドラフト デッキ
クリーチャー (15)
2 x [C]《隊商の随員》
1 x [C]《暁輝きの発動者》 : 第2の勝ち筋。
1 x [C]《イキーラルの先導》
1 x [C]《岸壁安息所の騎士》
1 x [C]《コーの綱投げ》
2 x [C]《族霊導きの鹿羚羊》 : オーラをサーチしてアドバンテージ確保。
2 x [C]《オーラのナーリッド》 : 主役。たくさん取れると嬉しい。
1 x [C]《コジレックの捕食者》
1 x [U]《ペラッカのワーム》
2 x [C]《踏みつけの仔》 : パワーが大きくトランプル持ち。デッキによく合う。
1 x [C]《ウラモグの破壊者》
スペル (9)
1 x [U]《無傷の発現》
1 x [C]《護衛の義務》 : 厄介なアタッカーを足止め。
3 x [C]《ハイエナの陰影》 : クリーチャー戦では先制攻撃が強力。
1 x [C]《帰化》 : 相手のオーラ対策。カットも兼ねてピック。
2 x [C]《蛇の陰影》 : 飛行やトランプル持ちとも相性がいい。
1 x [C]《蜘蛛の陰影》 : 割と安く取れるオーラ。
土地 (17)
9 x [C]《森》
8 x [C]《平地》

(2) 白青レベル

 主なデッキ構成

・Lv系クリーチャーと、そのサポートが多く含まれる2色で組みます。Lv系クリーチャーには、飛行持ち(回避能力持ち)が多いので、クリーチャーが並んでも攻撃を通せるのが魅力です。
・アンコモン以上の希少度のLv系クリーチャーは、いずれも強力。取りましょう。
・Lvアップ・コストを踏み倒せる《敬慕される教師》をかき集めます。また、Lv3以上のクリーチャーの存在で4/4飛行になれる、《勇者のドレイク》もなるべく多く確保したいところです。
・状況次第ですが、Lvアップを急ぐ必要はありません。タフネスを3にして除去耐性を整えたなら、展開を重視して構いません。特に、《カビーラの擁護者》《英雄の時》等の全体強化が取れれば磐石の体勢になります。
・飛行で攻めるデッキなので、地上を壁クリーチャーで固めるのを忘れずに。
・成長前は、火力に弱いので、《長魚の陰影》を構えておきましょう。
・サポートカードが明確で、比較的分かりやすく強力なアーキタイプであるため、卓内でかぶりやすいです。同系に当たると厄介。天敵のバウンスに加え、飛行持ちの壁クリーチャー、《魂縛りの守護者》《護衛のゴーマゾア》に止められて泥沼化することも。《睡眠発作》や、バウンスは確保しておきたいところ。《ハリマーの波見張り》も良いです。
・エルドラージや族霊鎧オーラに対しては、バウンスの《逆行》が効きます。なるべく確保するよう心がけましょう。(10-05-05追記)

 デッキ例

ROEx3・ドラフト デッキ
クリーチャー (16)
1 x [C]《隊商の随員》 : Lv系。1ターン目から展開可能。
1 x [C]《暁輝きの発動者》
1 x [C]《岸壁安息所の騎士》 : Lv系。飛行持ち。
3 x [C]《勇者のドレイク》 : 飛行4/4がなんと(2)マナ。
1 x [U]《飛び地の暗号術士》 : 早くLv3に。凄いアドバンテージを稼ぐ。
1 x [C]《霜風の発動者》
1 x [U]《ハーダの巡回スパイ》 : Lv系。確実に攻撃を通せる。
1 x [C]《ハリマーの波見張り》 : Lv系。Lv1でも壁として十分。
4 x [C]《空見張りの達人》 : Lv系。最終的には4/2飛行に。
2 x [C]《敬慕される教師》 : Lv系が突然進化。何を差し置いても取ろう。
スペル (8)
2 x [C]《刺し込む光》
1 x [C]《ひずみの一撃》 : 何かと便利。最後の決め手に。
4 x [C]《長魚の陰影》 : 除去対策とパワーの底上げに。
1 x [C]《睡眠発作》 : 万能除去。
土地 (17)
10 x [C]《島》
7 x [C]《平地》

(3) 青赤「ひずみの一撃」コンボ

 主なデッキ構成

・妨害に優れる青と、防衛持ちと火力を有する赤の2色。回避能力を与える《ひずみの一撃》を、パワーの高い赤のクリーチャーに与え、相手のライフを削ります。特に、《窯の悪鬼》《ヴァラクートの火猪》等と相性が良いです。これらは、いずれも他のデッキでは使いにくいために流れやすく、終盤のピックでも取れるのが利点です。
・反復を持つ《ひずみの一撃》を多く集めるのが理想ですが、取れなかった場合には、《炎の覆い》を代わりに使うことで似たような動きができます。(10-05-05追記)
・攻撃クリーチャーは数体確保すれば十分。残りは相手の攻撃に耐えるために、壁クリーチャーやスペルで固めてしまって構いません。ひとたび戦場が整えば、メイン・フェイズでマナを使わないので、《剥奪》などのカウンターを入れるのも手です。
・防衛持ちを固め取りできるので、《孔の歩哨》による本体火力も、このデッキでは優秀。勝ち手段の1つになります。

 デッキ例

ROEx3・ドラフト デッキ
クリーチャー (17)
1 x [U]《護衛のゴーマゾア》 : 戦闘ダメージ無効。トップクラスの壁。
1 x [C]《ハリマーの波見張り》 : すぐに戦場に出せる。
1 x [C]《ジュワー島の小走り》
1 x [C]《記憶の壁》 : 反復持ちの呪文を回収、とても嫌らしい。
1 x [R]《サラカーの呪文刃》 : このデッキなら存分に活躍する。
1 x [U]《アクームの岩足》
1 x [C]《戦闘塁壁》 : 壁。あまり期待してはいけない。
2 x [C]《エムラクールの孵化者》
2 x [C]《窯の悪鬼》 : コンボ用アタッカーその1。タフネス2に注意。
1 x [C]《ラガークトカゲ》
2 x [C]《オーガの歩哨》 : 序盤から展開できる壁。
1 x [U]《ヴァラクートの火猪》 : コンボ用アタッカーその2。壁役もこなす。
2 x [C]《孔の歩哨》 : 隠れた主役。本体ダメージを狙おう。
スペル (7)
3 x [C]《ひずみの一撃》 : 代替が利きにくいので早めに確保。3枚は欲しい。
2 x [C]《逆行》 : 環境が遅いので、かなりの妨害ができる。
1 x [U]《二股の稲妻》 : 火力サポートはあると楽。
1 x [C]《よろめきショック》 : 反復が地味に嬉しい。
土地 (17)
9 x [C]《山》
7 x [C]《島》
1 x [C]《進化する荒野》 : 色マナ安定用に。

(4) 赤緑エルドラージ

 主なデッキ構成

・マナに変換できる「エルドラージ・落とし子・トークン」を大量に出し、マナ・ブーストから、巨大クリーチャー、エルドラージを召喚して一気に勝負を決めます。相手が対処できなければ、滅殺能力が相手のマナ基盤を破壊してゆくので、早く出すほど有利です。
・とにかくスピードに特化するため、マナ加速がきわめて重要です。エルドラージを唱えるマナが揃ったなら、「エルドラージ・落とし子・トークン」を犠牲にしてでも速やかに出しましょう。
・エルドラージなら何でも良いというわけではなく、せいぜい(11)マナまでのものに抑えておくことを勧めます。それ以上のコストのものは、優れた加速装置である《目覚めの領域》がないと、戦場にすら出せません。
・エルドラージは、コモンにも《ウラモグの破壊者》が居ますが、無色である故に他のデッキにも入り得ます。また分かりやすいアーキタイプであることも相まって、かぶりやすいです。ピック時に最悪1体も回ってこないこともあり、安定性にやや難があるのが欠点です。(その場合、デッキはやや弱くなりますが、他のファッティで代用しましょう。)
・同系対策には、スピードに特化するのが最も有効です。青白系の飛行に対しては、《葉の矢》や火力だけでは十分に対策できないので、クリーチャーを増やしてビートの速度を上げるか、《蜘蛛の陰影》《胞子頭の蜘蛛》を使うとおおむね止まります。(10-05-05追記)

 デッキ例

ROEx3・ドラフト デッキ
クリーチャー (18)
1 x [C]《エムラクールの孵化者》 : 落とし子生成。ここまでくればあと一息。
1 x [C]《ラガークトカゲ》
1 x [C]《オーガの歩哨》
1 x [U]《魂うねりの精霊》 : 自然とクリーチャーが多く並ぶ。
2 x [C]《短刀背のバジリスク》 : 接死は攻防に使える。
1 x [U]《ジョラーガの樹語り》 : Lv1にして直ちにマナを出せる。
3 x [C]《コジレックの捕食者》 : マナ・ブーストの鍵を握るので集めたい。
1 x [C]《巣の侵略者》 : 落とし子を出せればOK。
2 x [C]《オンドゥの巨人》 : 出せば1マナ伸びる壁。エルドラージに至るまでの潤滑剤。
1 x [C]《踏みつけの仔》
1 x [C]《野心の発動者》
1 x [U]《コジレックの職工》 : 9マナ・エルドラージ。10/9のサイズは圧巻!
2 x [C]《ウラモグの破壊者》 : コモンの8マナ・エルドラージ。お手軽。
スペル (6)
1 x [U]《爆発的天啓》 : 火力を打ちつつドロー。ダメージの期待値は高め。
1 x [C]《熱光線》
1 x [C]《炎の覆い》 : エンドカード。相手の落とし子を焼くのにも。
1 x [C]《成長の発作》 : マナを伸ばしつつ、落とし子を1体。
1 x [C]《蛇の陰影》 : エルドラージに付けられるといいなあ。
1 x [C]《蜘蛛の陰影》
土地 (17)
9 x [C]《森》
8 x [C]《山》

 おわりに

新しいセットで戦略を模索するのは楽しいです。
掲示板で情報提供くださった皆さん、ありがとうございました。

この環境で、隣からのサイン(シグナル)を考える場合には、「色」基準ではなく、「アーキタイプ」基準で判断した方が良さそうです。その点、アラーラの断片・ブロックと似ていますね。
見た目は単色カードなだけに、戦略の意思疎通が取れていなければ、卓内での共存はアラーラの断片・ブロック以上に難しいかもしれません。追々、考察できるといいなぁ…

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