ドラフトの戦略10

M11。強い色、弱い色(2)


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 「モデルデッキ」での対戦

強い色を見きわめるべく、前回 ドラフトの戦略9 〜M11。強い色、弱い色〜 で色々やりました。その中で「モデルデッキ」を使ったシミュレーションを行いましたが、今回はさらにそれを進めて、色ごとの相性などについて探ってみたいと思います。

まずは、おさらいから。
各色の「アンコモン4枚・コモン8枚と、対応した土地8枚」をセットにし、任意の2色のセットと 《広漠なる変幻地》 を加えた41枚の「モデルデッキ」を作り、対戦させます。
「モデルデッキ」は、ピックから「普通に」作られそうなデッキをめざしました。基本的に、カードは各色ごとに点数の高いものから1枚ずつ選んでいます。

 ※ シミュレーションの補足
・この結果は、すべて私GRが一人回ししたものなので、プレイの癖が反映されている恐れがあります。
・サイドボードは考慮しません。
・勝ち数差3以上、または10ゲームまで対戦しました。
・相手のカードプールが判っているものとして対戦しました。
・先攻/後攻は、偏らないよう交互に始めています。マリガンの基準は「初手に土地が1枚以下or6枚以上」の条件のみです。
・アーティファクトは入れないので、「アーティファクトに対策できる」という観点での強さは、今回の評価には入れていません。

 対戦結果

デッキの相性は確かに存在し、五分五分となる対戦もあれば、何度やっても片方が勝ってしまうセットアップもあります。
そのためデッキが(前回のように)5つだけでは偏るおそれがあり、強さを測るには十分ではないので、今回は10種のデッキすべてに対して対戦しました。
勝率は経験的な頻度、「ゲームの勝ち数/ゲーム総数」として定義します。以下に結果を示します。

vs.GUvs.WUvs.URvs.UBvs.RWvs.RGvs.WBvs.GWvs.BRvs.BG勝率平均
GU- 60%
(6/10)
50%
(5/10)
71%
(5/ 7)
83%
(5/ 6)
29%
(2/ 7)
60%
(6/10)
67%
(6/ 9)
29%
(2/ 7)
100%
(5/ 5)
 61.0%
WU 40%
(4/10)
- 83%
(5/ 6)
67%
(6/ 9)
33%
(3/ 9)
100%
(5/ 5)
50%
(5/10)
33%
(3/ 9)
60%
(6/10)
50%
(5/10)
 57.4%
UR 50%
(5/10)
17%
(1/ 6)
- 67%
(6/ 9)
100%
(5/ 5)
17%
(1/ 6)
60%
(6/10)
83%
(5/ 6)
40%
(4/10)
71%
(5/ 7)
 56.1%
UB 29%
(2/ 7)
33%
(3/ 9)
33%
(3/ 9)
- 83%
(5/ 6)
50%
(5/10)
71%
(5/ 7)
50%
(5/10)
67%
(3/ 9)
60%
(6/10)
 53.0%
RW 17%
(1/ 6)
67%
(6/ 9)
0%
(0/ 5)
17%
(1/ 6)
- 83%
(5/ 6)
83%
(5/ 6)
100%
(5/ 5)
33%
(3/ 9)
71%
(5/ 7)
 52.4%
RG 71%
(5/ 7)
0%
(0/ 5)
83%
(5/ 6)
50%
(5/10)
17%
(1/ 6)
- 40%
(4/10)
60%
(6/10)
100%
(5/ 5)
50%
(5/10)
 52.4%
WB 40%
(4/10)
50%
(5/10)
40%
(4/10)
29%
(2/ 7)
17%
(1/ 6)
60%
(6/10)
- 29%
(2/ 7)
71%
(5/ 7)
100%
(5/ 5)
 48.4%
GW 33%
(3/ 9)
67%
(6/ 9)
17%
(1/ 6)
50%
(5/10)
0%
(0/ 5)
40%
(4/10)
71%
(5/ 7)
- 67%
(6/ 9)
83%
(5/ 6)
 47.6%
BR 71%
(5/ 7)
40%
(4/10)
60%
(6/10)
33%
(3/ 9)
67%
(6/ 9)
0%
(0/ 5)
29%
(2/ 7)
33%
(3/10)
- 83%
(5/ 6)
 46.3%
BG 0%
(0/ 5)
50%
(5/10)
29%
(2/ 7)
40%
(4/10)
29%
(2/ 7)
50%
(5/10)
0%
(0/ 5)
17%
(1/ 6)
17%
(1/ 6)
- 25.6%
注目する色が含まれるデッキの、勝率の平均値を取り「色の強さ」とします。
 (例) 白なら
  ( WU:57.4% + RW:52.4% + WB:48.4% + GW:47.6% ) ÷ 4 = 51.4%
高い順に並べるとこのような結果になりました。
青: 56.9%
赤: 51.8%
白: 51.4%
緑: 46.6%
黒: 43.3%

色ごとに、いくつか特筆します。
:強い。勝率のよいデッキの上位はすべて青が含まれている。
:一つ一つのカードの強さだと低く評価されがちだが、対戦では十分に戦える。《投げ飛ばし》《反逆の行動》 の同色内で完結するシナジーがあり、相手次第では、大ダメージをプレイヤーに叩きだせる。カード消費は激しいので息切れしやすい。
:青以外との組み合わせを考慮すると、そう際立って強いわけではない。前回、強いと判断したのは早計だった。
:マナ加速 《耕作》 からの大型クリーチャーや、《酸のスライム》 による土地・エンチャント破壊 が頼もしい。基本は地上戦で、大型クリーチャーが複数並びだせば勝ちを狙える。
:カード選択を誤ったか、イマイチ振るわなかった。長期戦で威力を発揮する遅めのカードが多く、テンポで攻められるとどうしようもない。もし仮に 《精神腐敗》 等が入っていたら違う結果になっただろうか?

前回も書きましたが、あくまでも「管理人のGR」が「上のモデルデッキ」でプレイした結果を示しただけです。注意してください。この結果は1枚のレアカードの参入や、プレイスタイルなどの影響を強く受けるはずです。

 デッキの相性

表を見てわかるとおり、どの相手でも常に勝率が5割以上、という色の組み合わせは無いです。強いデッキができても、トーナメントで必ず勝てるわけではない理由のひとつは、デッキ間の相性にあるのでしょう。(その相性を吹き飛ばすほどの強力なレアがあるのもまた事実ですが…)
この相性は、デッキの戦略から説明できるものもあります。

 赤白

このデッキは、序盤から白の軽い飛行クリーチャーが展開できます。相手が出してきた邪魔なクリーチャーは火力で薙ぎ払いクリーチャーの攻撃を通し、相手ライフを素早く攻める……という動きになります。
したがって、青系のタフネスの高い飛行クリーチャーを出された途端、戦略が回りにくくなります。赤白は、青系相手には弱いが、それ以外に対しては有利に戦える色の組み合わせです。例外として、黒赤が相手だと振るっていないようです…除去が多いからでしょう。

 青緑

一番勝率が良かった青緑のデッキは、青のドロー・緑のマナ加速を生かし、クリーチャーを展開、その質で勝負するデッキです。青のドロー・サポートから緑の大型クリーチャーを出し勝負を決める。もしくは、緑のクリーチャーで地上を止めている隙に青の飛行持ちでトドメをさす動きになります。
そのため、おおかたのデッキに対しては有利に戦えます。ただ、似たような地上戦主体の戦略を取るデッキ、赤緑・緑黒に対しては十分ではないようです。こちらの緑のクリーチャーを除去された場合、相手の緑クリーチャーを止めるのはなかなか困難です。

 緑黒

今回、緑黒のデッキだけ極めて弱かったです。他はさておき、緑をやる場合には、黒と組み合わせるのは控えた方がよいのかもしれません。
このデッキは大半が地上戦力で、黒もクリーチャー除去がメインなため攻撃パターンは単調。「除去で薙ぎ払って地上から殴る」という攻め手を止められると脆いです。
ちなみに、このデッキの影響で緑が弱めに評価されています。緑黒の対戦結果をすべて50%にして、このデッキの影響を除くと、色の順位は 青54.6% → 緑50.4% → 赤49.7% → 白48.5% → 黒46.8% の順になります。参考までに。

 まとめ

つまるところ、シミュレーションによる色の評価は、
(強い) 青 > 赤&白&緑 > 黒 (弱い)
となりました。
デッキが標準のものだとしても、勝ち負けは相手との相性も大事。アテになりますかどうか。

 おわりに

ちなみに今回のシミュレーション、途中で引くに引けず、ついつい進めてしまいました。始めたは良いのですが、今回の結果が自分のプレイの癖によるものなのかどうか? …疑い出したらきりがない!
上の結果も、デッキに入れたアンコモンの強さが、そのまま色の強さとして勝率に反映されたようにも見えます。偶然でしょうか?
段々と色の強さを相対的に比較する意味が判らなくなってきています。

まあドラフトは楽しんでなんぼ。今回の件を参考に、今後は積極的に青を狙っていきたいとGRは思っています。(シミュレーションする前と何一つとして変わっていないですが……しいていうなら、変わったのは確信の具合?)
M11は、青以外の色は上手くバランスが取れているのかもしれません。赤は弱いと思っていましたが、プレイ成績を見るかぎりはそうでもないことに驚きました。先入観を排して、試してみるのは悪くない……火力をきちんと確保できれば、赤は悪い選択肢ではなさそうです。

今回の分析も、相変わらずひとりよがりな部分だらけですが、ドラフト戦を理解する助けになれば幸い。
ではまた!

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